昔、石投げの名人がいた。この男が石を投げると、狙った的を外すことがなく、百発百中だという。
しかし、この石投げ名人の上をいく強敵が現われた。動かない的に当たるのは当たり前だ。二代目名人は、空を飛ぶ鳥に石を当てることができるという。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
しかし、上には上があるもので、さらなる強者が現われた。三代目名人は、一つの石で二羽の鳥を落とすという。
これを聞いた初代名人は心中穏やかではない。そこで、さっそく猛特訓に取り組んだ。
手始めに、庭にいる鶏に石を投げつけてみた。すると見事に当たったが、これは何か違うなと思った。そこで、鶏に空を飛ぶ特訓をやらせることにしたが、これもやはり何かが違う。
初代名人がボケたことをやってるうちに、二代目名人は、かの山に行って兎を追っていた。ぴょんぴょん飛び跳ねる兎めがけて石を投げつけると、兎は鵜と鷺に分裂して飛び立ったが、跳ね返った石が命中して、二羽とも落ちた。
よし、次は二羽の兎に挑戦してやろう。これに成功すれば「一石二兎四鳥」だ。二代目名人は二兎を追い始めた。
こうなると、三代目名人もうかうかとしていられない。大きな鳥に石を当てたぐらいではまだまだだ。小さな鳥に命中させてこそ名人というものだろう。そこで、小さなハチドリを狙ってやろうと考えた。
ちょうど折りよく二羽のハチドリが飛んで来たので、小石を拾って投げつけた。小石は見事に命中したが、ハチドリだと思っていたのは実は蜂だった。怒った蜂は名人に向かって来て、プスリと刺した。
あまりの痛さで名人が泣いていると、もう一匹が向かって来た。泣きっ面に蜂とはこのことだ。
「もう刺さないでくれ!」
名人が泣きながら頼むと、もう一匹はこう答えた。
「安心しろ。同じときに二回刺されても死にはしないよ」
「なんだ、そうだったのか」
「それに、俺は蜂ではなくて虻だ」
虻は名人を一刺しすると、どこかへ飛び去って行った。
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