昔、むかし、ある国に、桃姫という姫君がおりました。殿様と奥方様は、まるで桃太郎が生まれたようだと喜んで、桃姫と名づけたそうです。
桃姫が生まれたとき、三人の予言者がお城にやってきて、不吉な予言をしました。
一人目は「十五になったとき、姫君は大猿に連れ去られるだろう」と言い、二人目は「十五になったとき、姫君は泡に包まれて海に沈むだろう」と言い、三人目は「十五になったとき、姫君は百年の眠りにつくだろう」と言いました。これを聞いた殿様は、この三人の予言者を牢屋に入れてしまいました。
桃姫が十五になる前の晩、殿様の夢の中に一匹の亀が出てきて、こんなことを言いました。
「昔、助けていただいた亀でございます。どうか今こそ御恩返しをさせてください。今日、あの海で最初に釣れたものを、桃姫様の身につけてください。そうすれば、必ずお守りします」
目を覚ました殿様は、これは吉兆に違いないと思い、海へ行って釣りをしました。すると、大きな笊が釣れました。殿様は、この笊にとじ込められていた亀を海へ逃がしてやったことを思い出しました。
お城に戻った殿様は、さっそく桃姫の背中にその笊をくくりつけました。すると、桃姫は後ろ向きに、ゆっくりと歩き始めました。驚いて止めようとしましたが、殿様は、なぜか桃姫には追い付けません。奥方様も家臣たちも、お城の中にいる人は誰もみな、なぜか桃姫には追い付けません。お城を出た桃姫は、海へと向かってゆっくりと後ろ歩きを続けました。町の人も海辺の人も、この国にいる人は誰もみな、なぜか桃姫には追い付けません。桃姫は、ゆっくりと後ろ向きに海に入っていきました。そして、泡に包まれて海の底へと沈んで行きました。
殿様も奥方様も、城中の人たちも町や海辺の人たちも、桃姫が消えて行った海をみつめて嘆き悲しんでおりました。すると、海の中から桃姫が亀に乗って帰ってきました。桃姫は、竜宮城で百年の間ぐっすり眠っていたと言いました。そして、牢屋にいる三人の予言者に渡すようにと、乙姫様から玉手箱を預かってきたと言いました。
そして、予言者たちが玉手箱をあけると、中から白い煙が出てきて、三人とも若返って十五年前の姿に戻ったということです。

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