作者からの残念なお知らせ
続きを思い付いてしまいました。もう飽き飽きしているかと思いますが、今しばらく御辛抱ください。
白い空間に新たな影が現われた。それは大きな犬にまたがった姫のシルエットだった。この姿は、どこかで見たことがあるぞ。さては、かの有名な姫だな、と禁太郎たちは思った。
大きな犬の影から降り立った姫の影は、鹿に一礼した後、禁太郎たちのいる方を向いた。凛とした気を放っている。
鹿の影が紹介した。
「こちらは、犬神とその“使い番”の御方だ。我々だけでは力が及ばないので、犬神に助力をお願いしたのだ」
姫の影は、無言で禁太郎に歩み寄った。幣を両手で掲げ持ち、禁太郎の前で深々と御辞儀をする。禁太郎は、お祓いをするのだろうと思い、御辞儀を返した。すると、姫の影は右肩の上に構えた幣をほぼ水平に激しく一振りしたかと思うと、すぐさま両手両足を互い違いに振りながら大きく飛び上がり、着地した。同じ動作をもう一回した後、深々と御辞儀をした。(これと同じ一連の動作は、以下〔お祓い〕と略記する)
禁太郎が御辞儀を返すと、姫の影は腹掛けをつかんで奪い取った。呆気にとられて見ていると、姫の影は、禁太郎の腹掛けを鹿の影の腹部に付けて、鹿の影の前脚を持ち上げた。そして、厳かな声を発した。
「××ジカ!」
そのまましばらく間をおいて、姫の影は鹿の影の前脚を下ろして腹掛けを外した。次に、腹掛けを自分の腰に巻きつけて、鹿の影の角の部分を両手でしっかりと持ち、自分の体を水平に浮かせた。腰に巻きつけた腹掛けがはためいている。そして、厳かに一言。
「××シカ!」
*
次に、姫の影は馬の前に立ち、〔お祓い〕をした。馬が御辞儀を返すと、姫の影は馬の頭の角をつかんで奪い取って、自分の頭に付けた。そして、厳かに一言。
「×んとくん!」
そのまましばらく間をおいて、頭から角を外し、角の先を組み合わせて顔の前にかざした。そして目の高さで前後にゆっくりと動かした。そして、厳かに一言。
「×ントくん!」
ここまで見た禁太郎は、こう思った。「たぶん、かの有名な姫の名をもじった姫なのだろう」
*
さらに、姫の影は、猿と熊にも〔お祓い〕をしたが、奪い取る物が何もなかったためか、禁太郎の腹掛けと馬の角を使って、無言劇を演じた。
まず、腹掛けを地面に敷いて、四角いエリアを作った。次に鹿の影を招き寄せて、そのエリアの周囲をゆっくりと歩かせた。一歩、二歩、三歩。そして後退。一歩、二歩。その繰り返しを延々と続けた。すると、腹掛けの四隅のあたりから芽が出て、葉を広げ、花が咲き、萎れていった。ここで、鹿の影を退場させ、犬神の影を呼び寄せた。
犬神の影が腹掛けの周囲をゆっくりと歩き、隅のあたりに来ると地面の匂いを嗅ぎ、ここを掘れという素振りをする。姫の影は、馬の角を使って地面を掘り、茎を引く。里芋が二個実っている。これを繰り返し、四本の茎にそれぞれ二個ずつ実っている里芋が引き上げられた。姫の影は、掘り出した里芋を、鹿の影の背中の上に並べた。そして、厳かに一言。
「掘った芋!」
そのまましばらく間をおいて、里芋を腹掛けの上に並べた。そして、猿と熊と馬と禁太郎を招き寄せた。姫の影を見ると、手でつかんで持ち上げる身振りをしている。どうやら、収穫物を分け与えようということらしいと思って、各自、目の前にある里芋に手を伸ばすと、ひときわ厳かな声が響いた。
「いじるな!」
*
しばらく後、腹掛けの四隅を持ち上げて里芋を包めという意味だと分かって、その通りにした。すると、腹掛けの中の里芋はまぶしい光を放ち始めた。そして突然、四つの光がはじけ飛び、空の彼方へと四散した。腹掛けの中に残った四つの光は次第に弱まっていった。
姫の影に促され、禁太郎たちが恐る恐る腹掛けに近づいて見ると、そこには四つの玉があった。手に取って見ると、透き通った玉の中には「禁」の文字が浮かび上がっていた。
ここで禁太郎は、真相に思い至った。「ということは…。そっちの姫のもじりだったのか!」
こうして禁太郎たちは、空の彼方に飛び散った四つの玉を捜す旅に出ることになってしまった。
作者からの余分な補足説明
もう、お気付きかと思いますが、文中の「かの有名な姫の名をもじった姫」の名は、「もの×け姫」です。しかし、このもじりは既にいくつも前例があることが分かったため、没にしました。
ちなみに、「そっちの姫のもじり」というのも文中には書きませんでしたが、もちろん「伏せ×姫」です。こちらも前例があることが分かったため、没となりました。今後は「×××姫」という名前で活躍することになると思います。
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