楼の上へ出る梯子の中段に、一人の老人が、猫のように忽然として姿を現わした。見世物師はぎょっとしながら、鼠との会話を聞かれはしなかったかと考え、それを取り繕うかのように、老人に声をかけた。
「どうも、困ったお天気ですな。」
「実は、私は、ただの人間ではない。」老人は、自分の経歴を話し始めた。
(こいつは、気違いだ。)――そう思った見世物師は、守宮のように梯子を上った。
楼の上には、猿が蹲って猿の子の虱をとっていた。見世物師は、いつまでも、床に這ったまま、ぼんやり猿の親子を見上げていた。
話の行方は、誰も知らない。


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