昔、五匹の鼠に芝居をさせる見世物師がいた。ある寒い日の午後、商売帰りに雨に遭い、袋の鼠ともども濡れ鼠になりながら歩いていて、ふと目にとまった大きな門の下で雨やどりをした。ほかには誰もいない。悪政と災害が続いたため、どこの町へ行ってもさびれている。この門も荒れ放題だ。
見世物師が石段にぼんやり座っているうちに、雨はどしゃぶりになってきた。すると、袋の中から鼠の一匹が顔を出してこう言った。
「まったく、ひどい雨だね」
周囲に人がいないのを確かめて、見世物師は答えた。
「ああ、こりゃあゲリラ豪雨ってやつだぞ」
この喋る鼠に見世物師が出会ったのは、ほんの数年前のことだった。といっても、そのとき、この男は見世物師ではなく、ただの行商人だった。喋る鼠のおかげで、鼠の芝居という新しい商いができるようになったのだ。――このエピソードは、語り姫のアドリブで数夜に分けて語られることになるのだが、ここでは割愛する。――こうして、見世物師は喋る鼠を座付き作者にして、五匹の鼠による芝居という見世物で商いをするようになったのである。
見世物師は、時折、鼠に食わせてやってるのではなく、鼠に食わせてもらっているような気がしてくることがあった。まあ、そういうことがあったって、別に構わないだろう。なんたって、鼠が喋ってるんだから。


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