昔、漢の国に仲の悪い二人の漁夫がいた(ここまで読んでピンと来た方は、次のパラグラフへどうぞ)。一人は呉の国、もう一人は越の国の出身で、事あるごとに喧嘩ばかりしているこの二人を、周りの漁夫たちは止めるでもなくけしかけるでもなく、ただ取り囲んでなぜか楚の歌を歌っているだけだった。
ある日、この二人の漁夫が同じ舟に乗って漁をすることになった(ここまで読んでピンと来た方は、次のパラグラフへどうぞ)。喧嘩ばかりしていた漁夫は、ここはひとつ協力しようではないかと歩み寄って、仲良く漁をした。すると、浅瀬で一羽のシギが大きな二枚貝に嘴をはさまれてもがいているのが見えた。呉の漁夫はシギを、越の漁夫は大きな二枚貝をつかんで引っ張り、二人で獲物を捕まえた。
それを見ていた漢の漁夫たちは、また大きな二枚貝に鴫が嘴をはさまれるんではないかと期待して、毎日浅瀬へ行って待っていたが、一向に獲物が現われない。
「どうもこれは変だぞ」
「サギに引っかかったかな?」
「いや、サギではない。確かにシギだったぞ」
「じゃあ、法螺だったのかな?」
「いや、法螺貝ではない。確かに二枚貝だったぞ」
「そうそう、大きなハマグリだったよ」
「あっ、そういうことだったのか!」
「どういうこと?」
「あれは蜃気楼だったんだ」


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