その瞬間、ジョナサン(スウィフトの方)は考えた。本物のジョナサン(ハーカーの方)が現われてしまったからには、計画を立て直さなくてはならない。例のロンドンの物件の話をするために来たのだろう。だったら、伯爵になりすまして契約してしまえばいいんじゃないか。ちょうど伯爵の服を着ていることだし、ロンドンに発送する荷物の箱詰めを手伝ってもらっても不自然ではないだろう。
「わしがドラキュラじゃ…」
そう言いかけたとき、馬車を停めに行っていた馭者が戻ってきて、ジョナサン(ハーカーの方)が紹介した。
「こちらはヴァン・ヘルシング教授です。宿屋で足止めを食っていた私を、ここまで馬車に乗せて下さったのです」
「あなたがドラキュラ伯爵でしたか…」
そう言ってヘルシング教授は手に持っていた袋から何か小さな塊を取り出した。
「では、これをどうぞお持ちください」
ジョナサンはそれを受け取った。
「これは何ですか?」
「聖餅です。ところで、あなた、本当は誰ですか?」
バレてしまっては仕方がない。ジョナサン(スウィフトの方)は、観念した。
「すると、ドラキュラ伯爵を閉じ込めたというわけですね」
ジョナサン(スウィフトの方)の話を聞いていたヘルシング教授は身を乗り出した。
「どこにあるんですか、その鏡は」
鏡のある部屋に案内されたヘルシング教授は、壁にかかっている額縁に興味を示した。
「ほう、こんなところで『爬虫類』を目にするとは!」
「この絵が何か…?」
「いや、失礼。つい懐かしくて」
ヘルシング教授は、十字架でがんじからめにされた鏡を見た。
「なるほど。これではさすがのドラキュラも手も足も出せんでしょうな」
このとき、ヘルシング教授はさっきの絵の上を一匹の蜘蛛が歩いているのを鏡の中に見た。ハッとして振り返ると、蜘蛛の姿はなく、絵の中のトカゲの口が動いていた。


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