もう何が何だか、あちこち穴だらけになってきた。決壊する前に手早く修復してしまおう。
ジョナサンとヴィクターはアムステルダムへ飛んだ。教授に教えられた住所を頼りに訪ねていくと、色とりどりのチューリップ畑に囲まれた教会風の建物があった。ヘルシング教授が開発したという新品種のチューリップは、ニンニクの匂いがした。明るい部屋で父とエリザベスが元気に暮らしていた。その姿を見て、ヴィクターは久し振りに心が晴れていくのを感じていた。
ジョナサンの勧めで、三人は新大陸へ移住することになった。もう一人の弟と、親友を呼び寄せて、彼らは旅立って行った。ヴィクターはウィリアムとジュスティーヌのことを誰にも口外すまいと誓っていた。本当に生きている人間の方が大事だと気付いたのだろう。
ヘルシング教授は、ウィリアムとジュスティーヌを無名の怪物の家に連れて行った。無名の怪物は大いに喜び、教授に感謝した。こうして三人は、以前と同じように笑いながら慎ましく暮らしている。
時おり、教授から届けられる大きな荷物には生活必需品が詰まっていた。その中には毎回必ず何冊もの書物が含まれていて、ウィリアムとジュスティーヌは夢中になって読んだ。
ジョナサンがアムステルダムから帰って来ると、メアリーが尋ねた。
「街を守った少年の像を見た?」
「そんな暇はなかったよ」
なぜかメアリーはがっかりしていたようだったが、書き上げた怪物の物語を持って来た。ジョナサンはそれを読んで、よくもこんな救いようのない悲惨な話が書けるもんだと感心した。その物語を読み終えると、メアリーは憑物がおちたように元のミナに戻った。
それから一年ほど経ったとき、ゴダルミング卿(アーサー)とルーシーが盛大な結婚式を挙げた。もちろん、ジョナサンとミナも招待され、懐かしい顔が揃った。
ハンプティとダンプティは相変わらず何を考えているのかよく分からなかったが、ドラキュラ城は繁盛しているようだ。教授が作った新品種のチューリップも人気商品だそうだ。
精神科医のジャック・セワードは、本業の傍ら、ドラキュラ城のアトラクションの企画にも精を出しているという。怖い話のモデルには事欠かないのだろう。
残念ながらヘルシング教授は欠席だった。セワード医師の話によると、ウィリアムとジュスティーヌが独立して、あの無名の怪物が教授の助手として働くようになったそうだ。
これで、堤防にあいた穴は全部塞いだと思うけれど、どうだろう?
そうそう、一つ忘れていた。ジョナサンの鼻血を吸い、ウィリアムを絞殺した女吸血鬼のその後の行方は、ヘルシング教授が追跡している。こっちの方は、これで心配ない。強力な助手もいるし、何といっても教授自身が不死身なのだから。


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