パスタ脳の少年(ジョナサン作)

 ジョナサンは、メアリーに話した設定で、怖い話を書き始めた。

 少年が笑いながら歩き、歩きながらアイスクリームを食べ、アイスクリームを食べながら笑っていた。そこへ小型トラックが音もなく突っ込んできた。少年は笑いながらはねとばされ、はねとばされながら笑い、笑いながら脳死状態になった。少年は笑いながら生命維持装置によって生き、生命維持装置によって生きながら眠り、眠りながら死んだも同然の姿となり、死んだも同然の姿となりながら笑っていた。

 そのとき少年の兄は某国某所で笑いながら人工知能の研究をし、人工知能の研究をしながら笑っているマッド・サイエンティストだった。少年が笑いながら死んだも同然になったという知らせを聞いた少年の兄が笑いながら帰郷したとき、町の人々は何だか妙によそよそしい態度で彼を迎えた。

 少年の兄は笑いながら弟を見舞い、弟を見舞いながらパスタを茹で、パスタを茹でながら弟の頭を切り開き、弟の頭を切り開きながらアイスクリームを食べ、アイスクリームを食べながら弟の頭にパスタを詰め込み、弟の頭にパスタを詰め込みながら弟の頭を閉じ、弟の頭を閉じながら笑った。

 笑いながら死んだも同然の姿になっていた少年が笑いながら目を覚まし、目を覚ましながらアイスクリームを食べ、アイスクリームを笑べながら歩き、歩きながら笑い始めた。このときから町中の人々に、次々と異変が起き始める。

 小型トラックを運転していた男が、まず、小型トラックを運転しながら時々笑うようになった。次に、笑いながら時々アイスクリームを食べるようになり、さらに、アイスクリームを食べながら時々歩くようになり、ついには、歩きながら時々小型トラックを運転するようになってしまった。

 男が歩きながら小型トラックを運転し、小型トラックを運転しながら笑っていると、図書館の司書が笑いながら本を読み、本を読みながら歩いていた。その背後から小型トラックが音もなく突っ込んで来た。図書館の司書は笑いながらはねとばされ、笑いながら目覚めた少年の兄が笑いながら頭にパスタを詰め込むと、図書館の司書は笑いながら目を覚ました。

 図書館の司書が笑いながら本を読み、本を食べながら歩いていると、薬局の主人が笑いながらコンドームの大箱を出し、コンドームの大箱を食べながら笑っていた。その背後から図書館の司書が音もなく突っ込んで来た。薬局の主人は笑いながらはねとばされ、コンドームが笑いながらどこかへ飛んで行き、薬局の主人は笑いながら目を覚ました。

 コンドームが笑いながら空を飛び、空を飛びながらアンナが裸で笑っていると、その背後から笑いながらリチャードが突っ込んで来た。トーマスはアンナの乳房を捉えながら乳首を拇指で乱暴に揉みしだき、乳首を拇指で乱暴に揉みしだきながら痛めつけ、痛めつけながらアンナを犯し、アンナを犯しながら殺し、殺しながら逃げた。アンナはトーマスの下で揺れながらうなずき、うなずきながら喋り、喋りながら腰を動かした。リチャードが散弾銃をぶっぱなそうとすると、アンナが制止した。
 「第一章では、それより先へは行かないわよ」
 コンドームはトラックに轢き潰されてぺちゃんこになり、それを聞いたリチャードは小便をちびった。

 それから二十年…。

 町に住む人々は、みんな笑いながらパスタ脳になり、パスタ脳になりながら笑っていた。第二章がいつ書かれるのかだって? そんなことは誰も知らないよ。

原典:『死者の書』(ジョナサン・キャロル 著/浅羽莢子 訳/創元推理文庫)

 メアリーは、これを読んだ夜、笑いながら死んだも同然になり、死んだも同然になりながら頭の中にパスタが詰め込まれていくのを感じていた。

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このページは、かみ かずしげが2009年8月17日 00:00に書いたブログ記事です。

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