メアリーは、パスタを素材にして人工知能を作る男の話を書き始めた。当然これはスパゲティ・プログラムとなるわけだが、とにかく正常に動作さえすれば文芸的にはどうでもいいことだ。ここでは、チューリング・テストにパスするレベルに仕上げるためには、マカロニを適度に混ぜてトンネル効果を最大限に引き出す必要があったと書くにとどめておく。
あとはこれに肉体を与えてやるだけだ。さて、肉とか骨とか目玉なんかはどうやって手に入れたらいいだろう…。やっぱり真夜中の墓場へ行って、こっそり死体を掘り出すしかないのか? いまどき、そんな古典的な筋書きで怖がる人なんているんだろうか?
メアリーは考えあぐねてジョナサンに相談した。ジョナサンは、また自分の身に災難が降りかかってはたまらないと思った。そこで、第一稿の中で死なせた少年を再登場させてはどうかと、苦し紛れの思い付きを言ってみた。すると、意外なことにメアリーは気に入ったようだ。ジョナサンは調子に乗って、後付けの理屈を並べたてていく。
「こうすれば外見の醜さによって生じるB級ホラーっぽい感じを回避できるだろう?」
「なるほど」
「そうだ。その少年は死の直前まで笑っていたことにするといい」
ジョナサンには、どうやら少年の姿が見えてきたようだ。
「アイスクリームなんか食べながら道を歩いているところを、突然…」
「モンスターに襲われる、とか?」
「いや、そのモンスターはまだいないだろ」
「ああ、そうだったわ」
「突然、小型トラックにはねられて、脳死状態になる」
「それじゃ何だか普通の話っぽくない?」
ジョナサンは、別のパターンをいくつか考えてみたが、どれもこれも不自然な死に方になってしまうように感じた。
「そこは普通でいいんだ」
ジョナサンが自信ありげに断言したので、メアリーは黙って聞いていた。
「その少年の兄が、実はマッド・サイエンティストで、死んだ弟を蘇らせるために人工知能プログラムを移植する」
結局、よくあるパターンになってしまったなとジョナサンは思ったが、なぜかメアリーは乗り気になっている。
「つまり、見かけは天使のような子供で、中身は…、悪魔?」
「いやいや、そうじゃない。中身は、ただのもつれたスパゲティだ」
「それ、いただき!」
メアリーが勢いよく図書室から飛び出すと、廊下ではハンプティとダンプティが仮面とマリオネットを使って遊んでいた。それが何の一発ギャグなのか、メアリーには分からなかった。
こんなことでいいのだろうかと思わないでもないが、だいたいこれを書いてる作者の頭の中は、いつもこんな感じなのだから仕方がない。


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