ジョナサンは、伯爵の書斎に籠って、英語で書かれた蔵書を読んでいる。ハンプティとダンプティは、ジョナサンに何を話しかけても生返事しかしないので、退屈で仕方がない。そこで、城内のあちこちを探検しはじめた。
「伯爵の鍵を発見したぞ」
「この部屋には大きな箱の中できれいな女の人が眠っていたぞ」
「この部屋に金貨がどっさりあったぞ」
「隠し扉があったぞ」
「地下トンネルの先の部屋に大きな箱が50個あったぞ」
しかし、そこで行き詰まってしまった。二人は書斎に戻ってきて、攻略本はないかと書棚をあさり始めた。書棚の本を次々に床に放り投げて、中身を確かめていく。
「これも違うし」「これも違うか」「これも違うし」「これも違うな」「これも違うぞ」「これも違うだ」「これも違うよ」「これも違うね」
そして、案外早く目的の本を発見した。
「あったぞ」「おれが読む」「おれが見つけたんだ」「最初に触ったのはおれの方だ」
二人はしばらく争っていたが、書棚に昇っていたハンプティが別の本を見つけたため、攻略本はダンプティが読むことになった。
攻略本から顔を上げて、ダンプティがジョナサンに尋ねた。
「ねえ、あんたの名前はジョナサンっていうんだろ?」
「ああ、そうだよ」
「ミナっていう人が、ジョナサンから手紙が来ないって、心配してるよ」
「ああ、そうか…」
生返事をした後で、ジョナサンはやっと本から顔を上げた。
「何だ、この本は!」
ジョナサンは、床の上で慌ただしく本のページをめくっている。
「ジョナサン・ハーカーと、ミナ・マリー? そんな人、全然知らないよ」
そして、大声で笑い始めた。
「僕はジョナサン・スウィフトだよ」
すると、別の本を読んでいたハンプティがびっくりして顔を上げた。
「ジョナサン・スウィフトだって? この本を書いた人だったのか」
もう、何でもありだな、この書斎は。
「どうやら、伯爵は人違いをしていたようだね」
「ふーん」「で、これからどうするの?」
「そうだな…」
ジョナサンはテーブルの上に積み上げられている金貨を見た。
「この金貨はどうしたんだ?」
「この部屋で見つけたんだ」「いや、最初に見つけたのはおれだよ」「でも、おれがその部屋の鍵を見つけたんだろ」「いや、おれがマッピングしてたから、その鍵が見つかったんだ」
「まあまあ、落ち着いて」
ジョナサンはハンプティが振り回している手製の地図を取り上げた。
「ここに書き込んである、“50個の大きな箱”っていうのは…」
攻略本のページを繰って、日付を見た。
「六月三十日の朝、ツガニー人とスロヴァキア人が引き取りに来ることになっている」
そして、ハンプティ・タンプティに尋ねた。
「今日は何月何日だ?」
ハンプティとダンプティは顔を見合わせた。そして声をそろえて、こう叫んだ。
「今日は、おれたちの非誕生日だ!」
〔付記〕書いているうちに内容が変わってしまったので、「二人のジョナサン」は次回分のタイトルとして、今回分は「伯爵の蔵書」に改題しました。ややこしくてすみません。


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