伯爵の贈り物

 ジョナサンは、勝手に変なことを書き加えられた封筒を伯爵に向けて言った。
 「これは、どういう意味ですか!」
 すると伯爵は男爵に豹変して、こう答えた。
 「ほんの冗談じゃよ」
 「あなたの…。いや、伯爵の狙いは、一体何なんですか?」
 「ワガハイにはトンと見当もつかんな」
 「嘘だ。この封筒を見て、あんたはすぐに冗談だと言ったでしょう」
 「こんなの、誰だって一目で冗談だと分かるじゃろうが」
 「たしかに…。しかし、質の悪い冗談ですよ、これは」
 「そりゃまあ、そうじゃな…」
 男爵は伯爵に豹変し、ジョナサンの手から素早く封筒を奪い取った。そして、ゆっくりと封を切った。中から取り出した便箋を開くと、ジョナサンの顔に突き付けた。
 「それでは、これは質の良い冗談だと言うおつもりですかな」
 その便箋には、細かい速記文字がぎっしりと書き込まれていた。
 「こういう勝手なことをされては、困りますな」
 伯爵の目は意地悪く光っている。どうして便箋をすり替えたのに気付かれたのだろう。あの時、伯爵は確かに隣室に行っていた。ドアは開いていたが、こちらの部屋を覗き見たりすれば気付かなかった筈はない。ジョナサンは混乱した。
 伯爵は、便箋の速記文字を読み始めた。
 「五月八日のところに、こんなことが書いてありますな。『ひげ剃り鏡のなかに、伯爵の姿が映っていなかった』と。あの時は、わしも驚いて、うっかり鏡を割ってしもうたが、こんなことまで手紙に書かんでも良かろうに…」
 「そうか、鏡だ。鏡越しに見ていたんだな!」
 ジョナサンは、つい叫んでしまった。
 「そうじゃった。コンビニで代わりのを買うてきたんじゃ」
 伯爵は、隣室へ駆け込んで、鏡を持って来た。
 「安物で悪いが、これで我慢してくださらんか」
 「ああ…、それはわざわざどうも」
 そうじゃないだろ! おい、ジョナサン、しっかりしろっ!

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このページは、かみ かずしげが2009年7月25日 00:00に書いたブログ記事です。

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