分散していたジョナサンの意識は既に一つに収斂している。ジョナサンは長椅子に横たわり全身麻痺で硬直しているヤフーの雌への質問を続けた。なお、ヤフーの雌は瞬きの回数で答えることしかできない。
「あんたの足元で舌を噛み切って死んでるやつはヤフーか?」
瞬き一回。
「あんたと俺は同じ種族だと思うか?」
瞬き一回。
「じゃあ、あんたもヤフーだということになるな」
瞬き二回。
「いいや、残念ながら俺はヤフーだし、あんたもヤフーなんだ」
瞬き二回。
「だったら『あんたも俺も人間だ』と言い換えてみようか」
瞬き一回。
「そうか。それなら、こいつも人間だろう?」
瞬き二回。
「強情なやつだな。まあいい。いつまでもそうやってればいいさ」
瞬き二回。瞬き二回。
「まったく。自分勝手なところはヤフーそのものじゃないか」
瞬き二回。瞬き二回。瞬き二回。瞬き二回。
「何か喋りたいのか?」
瞬き一回。
ジョナサンは床から拾った薬草に火を点け、ヤフーの雌に煙を嗅がせた。口が動かせるようになったヤフーの雌はすぐさま口笛を吹いた。しかし、何も起こらなかった。
「あんたを咬んだ犬は、もうここにはいないよ」
ヤフーの雌は目を閉じている。
「何か喋りたかったんじゃないのか?」
ヤフーの雌は歯を食いしばって必死に何かを耐えているようだ。
「もう少し体が動けるようにしてやった方がいいのかな?」
ジョナサンがヤフーの雌の鼻に薬草の煙を近づけると、ヤフーの雌は目を見開いて激しく瞬きを繰り返した。
「さあ、もう少しで動けるようになるぞ」
「あ。ああっ…」
強ばっていたヤフーの雌の全身から緊張が解け、股間から黄色い液体が迸った。
「やっぱりあんた、ヤフーだよ」
ヤフーの雌の目は呆けたように焦点を失っている。
「なんだ、もう壊れちまったか…」
ジョナサンは新たな悪臭が漂い始めた円盤から立ち去った。
円盤はぶるぶると震え出して、やがて粉々に砕け散った。
「乗物の方も、見かけによらず脆かったな」
城の外に出ると、馬人が待っていた。
「ずいぶん遅かったな」
「ちょっと手間取ったけど、大したことはなかったよ」
ジョナサンは薬草の入った箱を馬人に返した。
「薬草を一枚使っただけで片づいた」
「さっき、雄のヤフーが出て来て服を拾って戻って行ったぞ」
「そうか。それなら心配することはもう何もないな」
ジョナサンは馬人と並んで、主人の待つ家へと向かった。


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