川べりに立って、熊が禁太郎と話している。
「どうも怪しいな、犬神のやつ」
「やつなんて言うなよ。神様なんだから」
「世界が消えたとか作者がどうしたとか妙なことを言ってたし」
「神様だから、いろんなことをお見通しなんだろう」
「中に作者が入ってるんじゃないか」
「まさか、そ」ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・何が起こったのか分からない。ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・二人の背後で鞭打つような音がしている。ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・振り返るとそこには犬神の姿があった。ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・犬神はその音に合わせて細かく体を跳ね上がらせている。ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ・ピシ。音が止み、犬神は倒れた。
禁太郎は犬神のもとへと走った。
少し離れていたところにいた猿が飛び上がった。
熊は「死亡フラグだったか」とつぶやき、その場に立ち尽くしている。
「あいつだ!」
空中から猿の叫び声が聞こえ、馬が大きく嘶いて川に飛び込んだ。
土手に座ってピンクの豚と何かを話していた河童の姫と×××姫は、あまりの出来事に悲鳴をあげることさえできずにいた。
「しっかりしろ!」
禁太郎が犬神のぐったりした体を抱きかかえている。その脇で熊は「俺のせいだ。さっきあんなことを言ったから…」とうなだれている。
馬が対岸に駆け付けたときには、猿は狙撃者を取り押さえていた。
「何てことしやがる! おめえは一体何者だ?」
「離せ離せ、離してくれ」
「蹴っ飛ばしてやりましょうか」
「分かった分かった、話すから話すから」
ぐるぐる巻きにした狙撃者を馬の背に乗せて、猿が戻ってきた。×××姫は犬神に取りすがり、涙を流して…。おや? 泣いていないぞ。笑ってるのか?
禁太郎も熊も河童の姫もピンクの豚も、犬神を囲んで大笑いをしている。そして、犬神は、狙撃者の姿を見ると、吠えかかった。
「やいこら、金碗大輔。あんたは何回俺を殺す気だ?」
すると、捕われた狙撃者はこう言い返した。
「久しぶりだな、八房。今はヽ大法師だ。僧の身ゆえ殺生などせぬぞ」
「僧か。それで数珠玉なんかを投げつけやがったのか」
「百発百中だ。たいした腕だろ」
「ふん。何しに来た?」
「そいつは御挨拶だな。お前が命拾いしたのは誰のおかげだったか、忘れたわけじゃあるまい」
「忘れるもんか。何かというとすぐその話だ。耳にタコができてる」
「そんな訳で、伏姫の想像妊娠騒ぎを丸く納めて、俺はこいつらと一緒に八犬士を捜す旅に出た、という次第でな」
この話、原典を知らない人には何のことやらさっぱり分からないだろうが、心配することはない。原典を知っていてもやっぱり分からないから。
「ところがある朝、目が覚めたら二人ともいなくなっていたんだな…」
どうやら長くなりそうだ。続きは次回、「ヽ大法師の話」で。


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