犬神との問答

 ピンクの豚が川面を眺めていると、×××姫がやって来た。
 「何を見てるの?」
 「……」
 猿と熊と馬と禁太郎と河童の姫も集まって来た。
 「何だ何だ」「どうした?」「何かあったんですか」「あっ、この感じは…」「デジャヴ?」
 その背後から、犬神の声がした。
 「今、一つの世界が消滅した」

 「それは一体、どういうことですか?」
 「正確には、一つの可能性が閉ざされたと言うべきかもしれない」
 「もっと分かりやすく言ってよ」
 「ここで、ある男が新しい仲間になるはずだった」
 「新しいなまか?」
 「そうだ。ところが、その男が跡形もなく消えてしまった」
 「死んだんですか?」
 「いや、生きている。別人としてだが」
 「元に戻せばいいじゃないですか」
 「もう無理だ。その別人が本来の姿だったのだから」
 「なぜだよ。やってみなきゃ分からないだろ!」
 「何万回やってみても、結果はどれも同じだろう」
 「どうしてそんなことが分かるんですか?」
 「君は、私に禁太郎飴をくれなかったね」
 「そういえば…。うっかりしてました、すみません」
 「いや、それでいいんだ。私が禁太郎飴を食べた世界は、全部消えてしまったのだから」
 「えっ……」
 「つまり、そういうことなんだ」
 「そんなのは、ただの偶然じゃないですか」
 「そうだ」
 「偶然なら、消えないことだってあるでしょう?」
 「もちろんだ。だから今、我々はここにいる」
 「じゃあ、その男が消えない場合だってあるはずです」
 「いや、それはないんだ」
 「訳が分からないな」
 「その男が消えたのは必然だった」
 「なぜ、そんなことが分かるんですか」
 「作者が最初からそのつもりで彼を登場させたからだ」
 「何のために?」
 「我々に警告するためだ。戦いに敗れたときには、こういうことになる、と」

 その場の全員が、疑わしそうな目で犬神を見ている。
 「作者がそこまで考えているなんて信じられない、という顔をしているな」
 犬神の顔に、動揺の色が滲み出てきた。
 「では、こうしよう。君たちの持っている玉を見せてくれ」

 禁太郎が玉を出した。「禁」の文字が浮かび上がっている。
 河童の姫が玉を出した。「金」の文字が浮かび上がっている。
 ピンクの豚が玉を出した。「矢」の文字が浮かび上がっている。

 「ここまでは既出だな。他の三個を見れば、作者の意図がはっきり分かるだろう」

 熊が玉を出した。「熊」の文字が浮かび上がっている。
 猿が玉を出した。「猿」の文字が浮かび上がっている。
 馬が玉を出した。「馬」の文字が浮かび上がっている。

 「何も考えてないじゃん!」
 全員に突っ込まれた犬神は、大きく息を吸って、長く尾を引く遠吠えをした。

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このページは、かみ かずしげが2009年7月 7日 00:00に書いたブログ記事です。

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