丸顔の少年が立ち上がると、抱きついていたピンクの豚は背中をよじ登り、肩ごしに丸顔の少年の顔を見た。すると、ピンクの豚は飛び降りて、頭を掻きながら謝る仕草をしはじめた。どうやら人違いだったらしい。丸顔の少年はピンクの豚に何かを投げつけて、独特の音をたてながら、逃げるように去って行った。
肩を落として俯いている豚に、猿が近づいてきて声をかけた。
「あんまり気にするなよ」
豚は、無言で地面を見ている。
「さっきは俺も、お前を猪だと思ってたんだから」
何かの匂いを嗅いでいた豚は、それを鼻で強く吸った。
すると、さっきの丸顔の少年と、得体の知れない妙な生き物が出現した。得体の知れない妙な生き物は、丸顔の少年が手に持っていた曲がったキュウリを奪い取り、その代りにドングリを一個渡して、どこかへ飛んで行った。
「何だ、今のは?」と目をこすっている猿の横で、豚はドングリをむしゃむしゃと食べている。
「どうかしたの?」
禁太郎たちがやって来た。
「お腹が減ってるんだね。そうだ、禁太郎飴をあげよう」
禁太郎が腹掛けの中から禁太郎飴を取り出した。
「切り口に僕の顔があるだろ? このほっぺたのところには、ちくわぶが入ってるんだよ」
豚は虚無僧の装束に早変わりして、禁太郎飴を吹き始めた。そして、時々かじった。
こうして、ピンクの豚が、禁太郎たちのなまかになった。
“他一篇”は、18:30頃からお読みください。
王子さまの帰還
スピーカーの前で、マー王がやきもきしている。
「大丈夫かなあ…」
「大丈夫ですよ」
ノー王は能天気なことを言う。
「お守り袋の中には、隠しマイクと通信機が仕込んであるんですから」
「でも、さっきから何も聞こえないよ…」
「そういえば、そうですね」
ノー王がボリュームを最大にしたとき、スピーカーが破壊的大音響を発して、沈黙した。
「ど、どうしたんだ?」
「たぶん、転んだんでしょ」
「何だ、今の音は」
ナー大王が入ってきた。
「こんなところで、何をこそこそやっとるんだ」
「いえ、あの、これは…」
「ニュートリノ通信機の実験ですよ」
「何だ、そんなものを仕掛けておったのか」
事情を聞いたナー大王が言った。
「それならそうと、ター王子に説明して、その盗聴器を地上に仕掛けさせればよかったんじゃないか」
「あっ、そうですね」
それからしばらくすると、全身泥だらけになったター王子が帰ってきた。
「大丈夫だったかい?」
「はい、大丈夫です」
「お守り袋は?」
ノー王は、ター王子の差し出したお守り袋を見た。
「ああ、ぺしゃんこに潰れてる!」
「何だそれくらい。まだほかにもあるんだろう?」
「いえ、これ一台きりなんです」
「馬鹿もんッ!」
こうして地上の平和は、またしても、かろうじて保たれたのであった。


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