河童の姫と“金”の玉

 禁太郎は、腹掛けの中から取り出したものを河童の姫に見せました。
 「これが、俺の禁太郎飴だ」
 「まあ、すごいわ」
 「さあ、早くしゃぶってくれ」
 河童の姫は、禁太郎飴を口に含みました。
 「ああ、こんなの初めてよ」

――ここまで話したとき、×××姫は馬に蹴り倒された。

 「僕の角で、変な人形劇をしないでください」
 そこへ、顔を洗いに行っていた禁太郎が戻って来た。
 「えーっと。どこからやったらいいのかな?」
 「そうですね…」
 架空の台本のページをめくりながら、馬が答えた。
 「沼の中から河童の姫が現われるシーンからやり直しましょう」

 すると、沼の中から、河童の姫がひょっこりと顔を出して、こう言った。
 「あなたが落としたのは、この“金”の玉ですか、それともこっちの“禁”の玉ですか」
 顔の高さに掲げた両手には、まったく同じ大きさの透明な玉が握られている。
 「僕が落としたのは“禁”の玉です。そっちじゃなくて、こっちの…」
 禁太郎が“禁”の文字が浮かび上がっている方の玉を指さすと、河童の姫は妖艶な微笑みを浮かべて、こう言った。
 「あなたは正直な人間ですね。それにその髪型も気に入りました」
 そして、沼にもぐり、禁太郎のいるほとりに向かって泳いできた。
 沼から上がってきた河童の姫は、裸だった。さっきはここで不覚にも鼻血を流してしまった禁太郎は、今回はどうにか持ちこたえた。しかし、その次に、河童の姫に裸のまま抱きつかれてしまったとき、禁太郎の我慢は臨界点を突破した。

 「話が進まないから、そこはカットして、河童の姫が話をするシーンからいきましょう」
 馬が、架空の台本の十数ページ分をびりびりと破り捨てながら言った。角を取り上げられた×××姫は、人形に見立てた両手をくんずほぐれつさせ、大人しく遊んでいる。

――そして、河童の姫は次のように語った。

 今から三日前のことです。何か明るく光るものが見えたので、私は水面から顔を出して空を眺めていました。まだ昼間なのに星が見えるのは珍しいことです。これがほうき星というものだろうかと思いました。そのほうき星はだんだん大きくなって、この沼に近づいて来るように見えました。私は恐くなって家に帰りました。

 その夜、夢の中に妖精が出てきて、こう言いました。
 「あなたは今日、空から落ちてくる光を見ましたね」
 私が頭の中で「はい」と答えると、妖精には、それが聞こえたようでした。
 「明日の朝、大寺院へ行って『生命の樹』の根本をご覧なさい。あなたが見つけた光は、そこにあります」

 翌朝、私は妖精に言われた通りに、大寺院へ行って『生命の樹』の根本を見ました。すると、そこには、この不思議な玉が落ちていたのです。光にかざして見ると“金”の文字が浮かび上がりました。
 すると、私の後ろから長老の声がしました。
 「おや、姫じゃないか。何か困ったことでもあったのかな」
 私が不思議な玉を見せて、これまでの話をすると、長老はこう言いました。
 「それは『善の果』だな。姫が最初に見つけたのだから姫のものだ。それを持っていると何かいいことがあるかもしれないよ」

 そして、今日、これと同じような玉が空から降ってきたのです。

――ここまで話した河童の姫は、裸のまま再び禁太郎に抱きついた。

| コメント(2) | トラックバック(0)
WebMoney ぷちカンパ

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://homeposition.net/mt/mt-tb.cgi/65

コメント(2)

かみかずしげさま

無風凧です。
禁太郎物語、「結び」がどうなるのか、心配しつつ、毎日楽しんでます!

旅も終りに近づき、いよいよ結びの一番。
東、、、禁太郎
西、、、くま

「八卦良い、、、残った、残った、、、」

次の物語への 念 が 残 った、、、、そして物語は永遠に続くのであった。残念。

な~んて。

 無風凧さん、いつもコメントをありがとうございます。

 この話の続きがどうなるのか、僕にも分かりません。禁太郎と熊が相撲をとるというのは盲点でした。

 「念が残った」で「残念」ですかー。きれいすぎるのがちょっと残念かも。(笑)

コメントする

カレンダー

<   2009年6月   >
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

タグクラウド

Powered by Movable Type 4.261

このページについて

このページは、かみ かずしげが2009年6月13日 01:26に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「玉をなくした禁太郎」です。

次のブログ記事は「×××姫の大好物・他一篇」です。

最近の記事はメインページで、過去の記事はアーカイブで閲覧できます。

最近のコメント