――馬にまたがった猿は、話を続けた。
「おまえ、また水飴を舐めるつもりだろ」とミザルが言いました。「そんなことをしたら、また和尚さんに叱られるぞ」とキカザルも言いました。「おまえ、本当に残念なやつだな」とイワザルまで言いました。
「うるさいな、黙ってろ」と残念が言うと、山猿たちが「黙るもんか」「舐めて叱られたらプラマイゼロじゃん」「おまえの頓智は猿知恵以下だ」と言いながら、和尚さんの部屋に入ってきて、残念を取り囲みました。
「じゃあ、その猿知恵をみせてみろよ」と、残念が言うと、山猿たちが「よーし」「その勝負、受けて立とう」「叱られずに水飴を舐めた方が勝ちだからな」と言い出して、頓智と猿知恵の勝負をすることになりました。
残念は、戸棚から壷を取り出して、三匹の山猿の前に置きました。
「さあ、舐めてみろよ」と、残念が言うと、山猿たちは「おれが舐める」「いや、おれが」「いや、おれが先だ」と争い始めました。残念が思わず「じゃあ、おれがやる」と手を上げると、山猿たちは「どーぞ、どーぞ」と言いました。
残念は水飴を舐めました。山猿たちがじっと見ていたので、いつもより余分に舐めました。
「さあ、次はおまえたちの番だぞ」と、残念が言うと、急に山猿たちは逃げて行きました。
「何だ、口ほどにもないやつらだな」
残念が何食わぬ顔で庭掃除をしていると、山猿たちがやってきて、残念の方をちらちら見ながらひそひそ話を始めました。
「お前たち、チクるなよ」と残念が言うと、山猿たちは「そんなこと、するもんか」と言いました。そこへ、和尚さんが帰ってきました。
「留守中、何か変わったことはなかったか」と和尚さんに尋ねられて、残念は「はい」と短く答えました。山猿たちを見ると、ミザルは両手で目をふさぎ、キカザルは両手で耳をおおい、イワザルは両手で口をおさえていました。
和尚さんは、首をかしげながら、部屋に入っていきました。
しばらくすると、和尚さんが残念を呼びました。「また廊下の掃除をサボったな」という小言を聞きながら和尚さんについて行くと、なるほど確かに、廊下には山猿たちの足跡がついていました。残念は嫌な予感がしました。
先に部屋に入った和尚さんは「まあ、ここに座りなさい」と言って、棚から壷を取り出しました。またお説教かと思って小さくなっていると、和尚さんが目の前に壷を置きました。
「山猿たちの様子が妙だったので、もしやと思ってこの壷を見たら、水飴が減っておった」
「毒ではなかったのですか」
「ああ、そうだったな。そんなことより、あの山猿めをとっちめる手はないものか…」
和尚さんは、山猿たちが犯人だと思い込んでいるようです。残念は、ほっとしました。
「ぼさっとしてないで、おまえも少しは何か考えろ」
「うーん…」と残念は唸り声をあげました。こういう頓智問題は大の苦手なのです。こんな目にあうのなら、和尚さんに叱られた方がマシです。
「あのー、和尚さん」と残念が話しかけると、和尚さんは「おおっ、何か思いついたのか」と顔をほころばせました。
「実は…。水飴を舐めたのは、わたしです」
それを聞いた和尚さんは、がっくりと肩を落としました。
「それは残念だな」
和尚さんは、残念にたっぷりとお説教をした後で、疑ってしまったお詫びに三匹の山猿を招待して、水飴をたくさん舐めさせたという話です。
――こう話を締めくくった猿は、みんなのブーイングを浴びた。


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