Jは(幸いなことに測量師だと思われているようだったので)、翌朝から地図作りにとりかかった。ただし、二人の助手が道具一式を忘れてきたため、ありあわせの道具を使うしかない。もちろん、二人を同じ名前で呼ぶなどという馬鹿げた思いつきは、すぐに捨てた。
Jとハンプティとダンプティ(とJが勝手に呼んでいる二人の助手)が測量をしていると、どこからともなく現われた村人たちが、ひそひそと言葉を交わしたりしている。Jが城へ続く道のことを尋ねると、村人たちは決まって困ったような顔をして曖昧な返事をしていなくなる。余所者を警戒しているのか、城に関する何らかの禁忌があるのか、判断がつかない。
あるとき、村長と話す機会があり、城の主は国王ではなく何とかいう伯爵だということを知ったJは、その伯爵に面会する方法を聞き出そうとしたが、それは不可能だと言われてしまった。地方行政の長であっても城の中へは入れないということだ。村長は城の官僚組織についての複雑な話をしたが、結局、得るものはなかった。
また、あるとき、城の人が訪れるという(Jが寝泊まりしているのとは別の)宿屋に測量の仕事を依頼した人物が宿泊しているというので、面会しようとしたが断られた。その宿屋で働くメイドらしき女性に覗き窓からその部屋を覗くことならできると言われたが、危険な匂いがしたので断った。
Jは、村人たちと“城の人”との間には深い溝があることを確信していた。何としても城へ行って伯爵に会いたいものだと思いつつ、毎日、地図に新しい道を描き足していった。自分の足で歩き回った感覚では、村全体はほぼ円形をしている筈なのだが、なぜか地図上の村は、いびつな形にくびれていた。


コメントする