ジョージ・ワシントンが少年だったときの話。ある偉人の伝記を読んで感銘を受けたジョージは、自分も何かインパクトのあるエピソードを作っておこうと考えた。そして、父親が大切にしている桜の木とかいうものを切り倒しておいて、後で正直に告白するという筋書きを思いついた。
こっそり斧を持ち出してみたものの、どれが桜なのかが分からない。これは困ったなあと、庭のあちこちを歩きながら思案しているうちに、持っていた斧をうっかり池の中に落としてしまった。
すると、池の中から女神が現われて、こう言った。
「あなたが落としたのは、金の斧ですか、銀の斧ですか、それとも鉄の斧ですか?」
ジョージは、これはどこかで聞いたことのある話だと思った。欲張って嘘を吐くと何も返してもらえず、正直に答えれば金の斧がもらえるのだ。しかし、金の斧では桜の木を切り倒せない。なんとかして鉄の斧を取り返す方法はないものだろうかと考えてみたけれど、妙案が浮かばない。
そこで、ジョージは、この経緯を洗いざらい女神に打ち明けてみた。
ジョージの話を聞いた女神は、にっこりと微笑んで、こう言った。
「よく正直に話しましたね。今日は特別にプラチナの斧をあげましょう」
こうして、プラチナの斧を手に入れたジョージ少年は、これでやっと桜の木を切り倒せるぞと思った。しかし、どれが桜の木なのやら、さっぱり分からない。仕方がないので、何も切らずに家に帰った。
斧が別の物と入れ代わっているのが見つかってから言い訳するよりも、進んで告白した方がいいだろう。鉄の斧をプラチナの斧と交換したのだから、褒められることはあっても叱られることはないはずだ。ジョージはそのように考えた。
その夜、ジョージはプラチナの斧を父に見せ、今日のできことを正直に話した。すると、ジョージの父は、激怒した。
「この大馬鹿者! 桜の木なんか、このあたりに一本も生えておらんぞ! 嘘を吐くなら、もっと巧い嘘を考えろ!」
ジョージ・ワシントンの生家には、激昂した父親がプラチナの斧を振り回して付けた傷が、今でも残っているという。


コメントする