昔、むかし、ある国に、伏姫という姫君がおりました。蝶よ花よと育てられた伏姫はすくすくと成長し、あっと言う間に婚活を考える年齢になりました。
ある日、伏姫は、八房という犬を連れて来ました。部屋に通された八房は、殿様の前にかしこまって座っています。
「して、今日は何の用じゃ?」と殿様が水を向けると、八房はひときわ緊張した面持ちで、こう答えました。
「お父さん。お嬢さんと結婚させてください」
これを聞いた殿様は、激怒しました。
「お前にお父さんなどと呼ばれる覚えはないっ!」
そう怒鳴った殿様は、尻尾の毛を逆立てて部屋から出ていってしまいました。
数分後、殿様が戻ってきました。
「いや、先程は失礼した」と、殿様が言いました。「この頃、どこへ行っても『お父さんだ』『お父さんだ』と言われるもので、ついカッとしてしまった。許してくれ」
八房は真面目な顔をして聞いていましたが、伏姫は笑いをこらえているようです。
「では、一つ条件を出そう。敵の大将の首を取って参れ。さすれば、そちを伏姫の婿として認めてやろう。どうじゃ、これでよいか?」
「ははっ。しかと承りました。必ずや敵の大将の首を取って参ります」
八房は、さっそく敵陣を目指して突っ走って行きました。
数分後、八房が戻って来ました。口には包みをくわえています。
「取って参りました」
「早いな」
殿様は包みの中身を確認しました。
「うむ。敵の大将に相違ない」
「それでは、お約束通り…」
「分かっておる」
殿様は莞爾として、こう言いました。
「ここで約束を違えたりすると、この後が大変だからな」


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