ある日、浴場で湯に浸かっていた一人の男が、突然叫び声をあげた。男は裸で道を走り、そのまま王宮に駆け込もうとした。
門番に見咎められた男は、「ついに発見したぞ! 発見したんだ!」と意味不明のことを口走るばかり。そこへ、怒りっぽいことで有名な大臣が通りかかる。
「何の騒ぎだ? 裸で騒ぐとは、最低の人間だな!」
「最低とは失礼な。わたしはアルキメデスだ!」
「最低で最悪の行為だったに訂正します」
「何をごちゃごちゃ言っとるか。早くヘロデ王に会わせろ。王冠の真贋を見抜く方法を発見したんだぞ」
「何だ、そうでしたか。それを早く言ってくださいよ」
こうして、アルキメデスと大臣の二人が玉座の間の前までやってきた。
「しかし、やはり裸のままで謁見するというのはいかがなものかと…」
「あっ、しまった! ひとっ走りして取ってくる」
「いえいえ、わたしが参りましょう。しばしお待ちを」
大臣は走り始めた。しかし、なかなか王宮の外に出られない。なぜならば、一番外側の門にたどり着くまえに、中間地点の門をくぐらなければならず、中間地点の門にたどり着くには、そのまた中間の門を…。
「遅いな」と、アルキメデスが痺れを切らして大臣を追いかけ始める。しかし、なかなか大臣に追いつけない。なぜならば、追いかけ始めたときに大臣がいた地点にアルキメデスが着いたときには、大臣はそれより先に進んでいて、その地点にアルキメデスが着いたときには、大臣はさらにまた進んでいて…。
この話は、細かいことにこだわると歴史的な偉業が台無しになることを示している。


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