今が昔になってしまった未来のお話です。
あるとき、ある海岸に、一人の不審な老人が現われました。通報を受けた民間警察官がすぐに駆けつけました。
警察官が氏名を尋ねると、老人は「ウラシマタロー」と名乗りました。ここで何をしているのかと尋ねると、「カメをタスけて、リューグージョーへイって、カエってキたら、みんないなくなっていた」などと意味不明のことを言っています。
老人が大事そうに抱えている不審な箱のことを尋ねると、「オトヒメサマからもらったタマテバコだ」という返事で、どうも要領を得ません。そこへ、目撃者の話を聞いていたもう一人の警察官が戻って来ました。
「モクゲキシャのハナシでは、ジーさんがそのハコのフタをアけたときにシロいケムリのよーなモノがデていたそーです」
「そーか。それはヤッカイだなー」
老人は近くの支店まで連行されて、手順通りの取り調べを受けました。
- IDカードを所持していない
- DNA照会の結果、行方不明者のリストにも全ユーザーリストにも該当者はなく、六親等以内の血縁者もいない
- 所持していた箱は爆発物ではなく、中の気体は無害である
- 声紋解析の結果、古代語に特有の訛りがある
以上の状況証拠を公開したところ、数分後に検察員が集まり、形式的な会議を経て「航時法違反容疑で逮捕・起訴・有罪」との結論に達しました。
航時法違反といえば殺人と並ぶ重罪です。状況証拠だけで有罪に持ち込めるのかという疑問も出ていましたが、ある検察員が「フタをアけたらシロいケムリのよーなモノが」で検索して、昔の判例を発見したのが決め手になったというお話です。
「ウラシマタロー」を検索した人がいなかったのは、本当に残念なことですね。


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