「“賞”をあげたい」などというのは烏滸がましい限りなので、思い出の一冊ということで…。
二十年余り前のことになりますが、ひょんなことが縁となって浜松町に本社のある電算写植の会社(G社)に中途採用でもぐりこんだ僕が、最初に関わったのが、この『歌語(うたことば)例歌事典』という本でした。
電算写植というのは、写真植字を電算化したもので、いわゆる“活字を組む”作業を、実際の鉛の活字を使わずに、分かりやすく言えばコンピュータを使って文字を組んで、レーザープリンタを使って印画紙に焼き付けるプロセスです(実際の印刷には、この印画紙から製版したものを原版として使うことになります)。
電算写植機という大きな機械があって、これは専用のコンピュータで扱いにくいということで、その会社ではパソコンで作成・編集したものを8インチのフロッピーディスクを介して専用機に流すシステムを自社開発して使っていました。当時、実務レベルのパソコンがやっと出始めた頃で、NECのPC9801シリーズを使っていました。
この事典は、万葉集から現代短歌にいたるまでの代表的な短歌約一万三千首を約三千の歌語別に分類して配列するというものです。歳時記の短歌版だと言えば分かりやすいでしょうか。歌語ごとに解説があり、その後に例歌が年代順に並びます。そして巻末には各種の索引が付いています。これを従来の手作業で編集すると大変な労力が必要になることは想像していただけると思います。
そんなわけで、この厄介な仕事がパソコンを導入してデータ処理を得意としていたG社に回ってきたのだと思います。しかし、頁数の多い事典を頁組みしていくという作業は、パソコンを使っても容易なことではありませんでした。何しろ量が半端ではなかったですから、やってもやっても終わらないという日々が半年ほど続きました。
最近、昔話のパロディをやっているうちに、どうしてもここに和歌のパロディを入れねばならないという無茶な考えに取り憑かれてしまって、「あのとき記念に一冊もらっておけばよかった」なんていう不埒な思い出し方をしたばかりです。検索したら、オンライン古書店で入手できるようでしたが、パロディの方は思い出の一冊は使わずにすませてしまったので、購入するかどうかで今迷っているところです。
さて、どうしましょう/迷ってないでこの機会にさっさと買いましょう/いくら何でもこんな取り上げ方は失礼でしょう/これを三十一文字にできなかったことが残念でしょう。
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